声優・ナレーターとして活躍したい。それはだれもが思うことだと思います。
でも、「仕事とはなにか」という観点で考えている人がどれだけいるのだろうか、と常々考えてしまいます。

好きなことを仕事にする、それは間違っていません。
でも、好きなように振舞うことが仕事として成立するかどうかは別問題です。
この違いをしっかり考えている人はどれほどいるのでしょうか。おそらくほとんどの方はこのことをあまり考えてきていません。
そもそも仕事とはどういうものなのでしょうか。
あなたの能力や好きなもの、作り上げたものや時間などを提供する。そしてそれらを必要とする側がいて初めて取引は成立します。売り手とその買い手がいて、金銭などでのやりとりが発生することで仕事は成立します。一方がやりたいことをやって成立するものではありません。ボランティアと仕事は違いますよね。そのため、「好きなことを仕事にする」ということは、その「好きなこと」に価値がなければ成立しないんですね。
基本的に芸事の世界では、時間を費やしてなにかを突き詰めることに価値を置きます。
だから専門学校や養成所で訓練をしてきて新人としてデビューした、ということがそれだけで「価値があるものとして」考えることが一般的になっています。そうでなければ、新人に仕事は回ってきません。なぜならば価値を証明しづらい無形のものを提供するからです。
だから売り手(事務所側・タレント)も買い手(クライアント企業や代理店・制作会社など)も新人タレントや実績のないタレントにも「価値がある」という認識で取引が行われます。
ではその価値があるということをどのように証明していくのか。
ひとつは実績。どんな作品に出演しているか、どんな役をもらったか。どんな仕事をしてきているか、です。現代ではSNSがありますので、そこでどれだけフォロワーがいるか。フォロワー数ですね。
それも指針になっています。このSNSのフォロワー数を参考にするようになったことについては思うところもありますが実際にそれが参考にされてしまっているのが現状なので、仕方がありません。
それ以外に方法がないのか、というとあります。
それが事務所との関係になります。
事務所との関係とはなにか。
事務所のスタッフとどれだけ意思の疎通ができているか、です。またどれだけ評価されているか。
そしてあなたがどんな仕事をやりたいのか、どんなことを考えているのか。
そのためにどんな努力をしているのか、どんなものやことに興味を持っているのかなどを事務所側が、マネージャーが把握しているかどうかが大事です。
事務所側としてはタレントを売ることで成り立つわけですから、タレントとの意思疎通に関わらず売ることが仕事となります。だから売る努力をします。
でも、考えてみてください。
あなたがイタリア料理店でバイトをしているとして、あるメニューの内容を聞かれたときにまったく知らなかったら説明できますか? さらにはおすすめできますか?
マネージャーは取引先との何気ない会話の中で、「場にいるだけで雰囲気が明るくなる子」「常に御朱印帳を持ち歩いていて、神社仏閣巡りの好きなタレントです」とか「最近ワークショップに通い始めて、課題意識と仕事に対する意識の高い子なんです」とかなどと営業トークをしたりします。
キャスティングの際には「〇〇のゲームが好きだからこの仕事に入れてあげたい」ということもあると思います。候補出しのときに「〇〇が好きなのでぜひやらせてあげたいです」なんてコメントを書かれて候補に出されたら、クライアントのゲーム会社としては、知らない人より知っているタレントに関わって欲しいと思うでしょうし、嬉しいかもしれません。
もしあなたが事務所に所属している方であれば、事務所スタッフとのコミュニケーションをどうとるか、どれだけとれているか。それが大事になります。
それこそが、あなたの評価になり、やがては価値につながります。
あなたの取引先は、まず事務所のスタッフです。
事務所のマネージャー、デスク、経理、あなたに関わる全ての人があなたを売り込む人になりうるのです。現場のディレクターはマネージャーの先にいる人です。クライアントなんてさらにその先にいる人たちです。
「チャンスがあればしっかりやれる」なんて言葉はよく聞きますが、無理です。
だって目の前の味方であるべきマネージャーにすら信用されていない人が、取引先の相手にどうやって価値を証明できるというのでしょうか。
車の両輪のように共通の認識を持って、協力して前に進んでいけるのが理想の関係なのではないでしょうか。理想論かもしれませんが……。
マネージャーはタレントのやりたいことなどを理解して仕事をとってくる。
タレントは仕事で最大限のパフォーマンスを発揮して結果を残す。
お互い良い仕事をして、笑顔で美味しいごはんを食べる。
こんな関係がマネージャーとスタッフで出来上がるとどれだけ良いことでしょうか。
ではフリーで活動している人はどうしたら良いのでしょうか。
フリーで活動している人の強みは何かと言うと、すべて自分の責任のもとに仕事をすることができるということです。大変ではあるでしょうが、自分の責任で営業をかけることができるということはある意味では強みだと思います。
なぜなら誰よりも自分のことを語れるのは自分しかいませんから。
ただ、人は他人からの評価の方が信用しやすいんですね。
だから自分はどんなにすごいんだ、といくら言ってもなかなか信用されにくいのも事実です。
ではどうしたら良いのでしょうか。
あるコミュニティ新聞社は、自社の新聞の評価を取引先の担当者に語ってもらったものを冊子としてまとめて営業先に配っていると聞いたことがあります。他者の評価というものは、本人の雄弁さを上回るものだということの証明かもしれません。
他に方法がないのか。やりようはいくらでもあります。
例えば、想いを伝えるようにすることです。
想いを伝えるとは、どんな仕事をしたいのか、なぜなのか、どんな想いでいるのか、などです。自分は何が出来てどれほどすごいんだ、なんていうよりも気持ちを素直にぶつける方が人は受け止めやすいのです。だからその想いを形にしてみると良いのではないかなと思います。
プロフィール情報を経歴だけでなく、自分の想いや気持ちを表現するツールにしてみてはいかがでしょうか。趣味やはまっていることなんかも良いかもしれません。
それについては誰よりも深く語れる、なんてことがあればそれは強みです。麻雀好きからプロになっている方もいますしね。
どのような方法もありですし、やってみてうまくいく方法を見つけていけば良いのです。
個人であれば、統計をとることも容易です。
目的としては、あなたの価値をどう高めるか。そしてチャンスが回ってきたときにどのようにして証明するのか。それが大事だと思います。
自分の価値を高めるために、なにができるのか。
その視点でビジネスとして考えてみることをおすすめします。
最後までお読みいただきありがとうございました。
次回はビジネスを大きく成長させるためにはどうしたらよいか、について書きたいと思います。