学んで欲しいことの一つに「語彙力を上げる」を挙げたいです。

声優・ナレーターは言葉を扱う仕事です。
プロとして言葉に触れることが前提なのに、なぜか語彙力がなさすぎるという問題が起きています。これはプロとして活動している方にも言えることではありますが、その劣化が著しいと思えます。
近年、日本という国が持つ精神性・考え方・言語などさまざまな面に注目が集まってきているように感じます。その中で日本語という言語は最古の言語であり、正しい日本語を喋ることができれば喧嘩はおきない、ということを言う方もいます。
喧嘩は意見の相違により起こると思われがちですが、ほとんどの場合は認識のずれによるものらしいんです。その認識のずれは、お互いに正しい言葉を知らないから起こる、というんです。
日本語はそこまで表現できる言葉なのかどうか、という疑問はありますが、「雨」に関わる表現だけでも2000種類あるそうです(真偽はわかりません)。「さめざめ」「しとしと」など、その状況を表す言葉が実はたくさん用意されていて、ただ単に私たちが知らないだけだと。
言語学者ではありませんから、そこまで精通しろというのも無理があります。でも、辞書に書いてある言葉くらいは目を通しておきたいです。辞書に書いていない言葉は、基本的には存在しない言葉です。その時々による造語ということになります。国語辞典についてはあとで触れます。
声優やナレーターは用意された原稿を喋るだけの仕事だから別にそこまで、と思う方もいそうですね。でも言葉には意味があり、その意味を理解できずに伝えるのと理解したうえで伝えるのではどちらのほうが良いでしょうか。
これはあくまでも個人的な見解ではありますが、声優・ナレーターの仕事には客観的な技術力を図る指標がありませんので、プロとして「言葉に対する意識が高くあるべき」だと思います。
語彙力を上げるにはどうしたらよいのか。方法はいくつかあります。
簡単な方法としては、あらゆるジャンルの書籍に触れることです。
推理小説から始めるのでもかまいません。純文学でも構いませんしSF小説でも良いです。本を読むことになれていない方はとっつきやすいところからでかまいませんので、本を読むようにしてほしいです。
難しい方法、というよりつまらない方法かもしれないけれど最も効果的な方法もあります。
それは、国語辞典を音読することです。
アクセント辞典でもかまいません。アクセント辞典ならば、イントネーションの確認もできますから効果的です。でも語彙力を上げるには、国語辞典が良いと思います。
ちゃんと意味が載ってますから、言葉に対する意識を高める意味でも、日常でわからない言葉・意味の説明できない言葉と出会ったら国語辞典で調べる習慣をつけると良いです。
基本的には、通常の国語辞典に掲載されていない言葉は、使われていない言葉か造語、業界特有や企業文化で生み出された言葉ということになります。
だから国語辞典に掲載されている言葉を覚えることは王道となります。
今はインターネットで検索すれば簡単に答えが確認できます。でも、調べるのは手軽ですが、調べた言葉しか触れることができない。これは調べる言葉だけを考えると便利なようですが、もったいない。
なにがもったいないかというと、調べたい言葉しか目に入らないからです。
国語辞典であれば、その言葉を調べる段階で他の言葉も目にします。調べる語句のついでに別の言葉にも触れられるんです。
あなたの目的は語彙力を上げることです。その過程で知らない言葉を調べる作業なので、ついでに覚える言葉を増やすことは結果的に効率的に語彙力を上げることに直結します。
最近SNSなどでは、自分の興味のある話題を予測して表示してくれます。
これは考えようによっては、
「自分に興味のないと予測された話題は表示されない」ということです。
また、運営企業側の問題で表示されないということも行われています。つまり自ら調べようとしなければ出会うことのない話題として消えていくということです。また見つけた情報すべてが真実ではないと思いますから、自分で情報を調べ、情報の取捨選択が必要になります。だから、インターネットは便利ですが活用の仕方については考えるべきです。
インターネット検索での例をお話しますね。
Wikipediaというサイトがあります。誰でも書き込める情報サイトです。
ここで情報戦が行われていることを知っていますか?
現在では新聞記者も自分で調べた情報ではなく、誰が書いたかわからないWikipediaをもとに記事を書いていると言われている時代です。
では、そのWikipediaに嘘の情報を交えて記載する者がいて、それが嘘だとわからない者が記事として引用した場合の影響力は計り知れません。
つまり、プロパガンダとして使われてしまう可能性、すでに使われている可能性が考えられるということです。その例として韓国語のハングル文字があります。
かつて日韓併合がありました。日本政府は朝鮮人の識字率の低さを解消するため学校教育を徹底しました。難しい漢字では覚えるまでに時間がかかる、そこで記号を組み合わせることで言語として成立する文字として、ハングル文字を開発・普及させたというのが普通の認識でした。
それが今ではどうでしょう。
もともとあった文字だとか、それを朝鮮人の王朝が普及したとか、そんなことがWikipediaに記載されています。知らない人が読んだら韓国が国家としてしっかりした国だったという印象になると思います。
実際は染色は黒色しかできなかったとか、新生児出産における死亡率が高く、衛生観念がなかったために、日本政府が道路・上下水道・病院の設置などを整備してきた、という歴史的に事実とされてきたことが覆い隠されていたりします。
韓国という国が好きな方も多いようなので、このあたりにしますが、少なくとも韓流ブームが来るまでのWikipedia記載と今では大きく違う、というのが認識です。
インターネットでの情報戦なんてこんなものです。つまり、便利だけど正しいかどうかは担保されないのがインターネットという空間です。
インターネットは万能ではない、ということを理解しておくことは必要です。
国語辞典もいろいろな種類があります。本屋で読み比べてみると面白いと思います。自分で知っている言葉をいくつか読み比べてみて、わかりやすいと思える国語辞典を買うのがおすすめです。
たとえば「右」という言葉をあなたならどのように説明するでしょうか。
簡単な言葉だけど言葉で説明しづらいものを読み比べてみると、各社ごとの特徴なんかも見えてきて面白いかもしれません。
現場では最近もう誰も触れなくなりましたが、「一挙放送」という言葉が使われることがあります。これは「一挙に放送」という言葉を知らないからなのか、尺の関係からなのか知りませんが、「一挙放送」と平板で読むことで定着してしまった悪例だと言えます。
言葉は時代によって変化していくものと言えばそれまでですが、書かれているからという理由で「正しい言葉かどうか」何の疑問も持たず読んでしまうような声優・ナレーターにあなたはなりたいですか?
プロとしてどうあるべきか、は現役の方々にも今一度考えてほしいことだと思います。プロとして活動しているけれど、言葉への意識の高いプロは昔よりも減っている気がします。それくらい、今の業界はレベルが低いと思います。
あなたがプロとして活躍したいのであれば、今から少しずつで良いので語彙力を上げ、言葉への意識を高く持つようにしてほしいです。日本語を美しい言葉として表現できるようになれば、それは日本語を扱う人として素晴らしいことです。語彙力があるかどうか、それだけで変わります。周りが語彙力に乏しい中で、あなたの語彙力が高ければ、それだけで差別化になります。
それは、あなたをより高みへ引き上げることになります。
最後までお読みいただきありがとうございました。