ファッションというと、男性よりも女性のほうが意識が高い印象があります。
実際お洒落だなと思うのも女性のほうが多いと思うのですが、ここでは服装について考えてみたいと思います。

ナレーター・声優は服装に関しては自由です。特にこんな格好をしなければいけない、というきまりのようなものはありません。あるとすれば、音のなるものを身に着けない、くらいでしょうか。ノイズの原因になりますからね。
自由だから好きな服装でいいじゃないか。そう思いますよね。
でもちょっと待ってください。
自由で良いのなら、せっかくですから有効に活かしてみるという考えはどうでしょうか。
ファッションというのは、個性が出ます。
自分はファッションセンスがないからどうしようもない、とあきらめる必要はありません。
まず、服装とはなにか、それを定義したいと思います。
服装とは、戦闘服である。
大げさですかね?
この意識がどういうことかというと、結局のところ、人は見た目の印象で判断しますということです。
視覚情報がその人の第一印象になるということはご存じかと思いますが、そうであるならば、その見た目に大きく影響するのが服装や髪型、小物類といったアクセサリーであることは想像がつきます。
つまり、どんな服装をするかで相手の印象が変わり、場合によっては自分の扱い方が変わる、ということです。具体的にどのように考えたらよいのかというと、上に書いたように「服装とは、戦闘服である」という考え方につながります。
人が見た目で判断しがちな生き物だということは、意識的に印象を服装でコントロールすることができるのではないか、ということです。
自分がどう見られるか、を運要素にするのではなく、意図的に、意識的に印象付けるような服装をするということです。
ただお洒落に見せたいとか可愛く思われたい。それも大事ですが、さらに踏み込んで、クールに見せたほうが良いとか、安心感を与えたいとか、接しやすい雰囲気を醸し出したいとか、その時々、仕事の内容や相手に応じてどう見せるのがプラスか、そういう発想でファッションというものをとらえてみてはいかがでしょうか。
だからといって、場違いな服装をしては意味がありません。
TPOを考えながらも、どんな印象を与えたいかを考えて服装選ぶをしてみるだけです。
服装をはじめとしたファッションで自分の与える印象をコントロールできるのであれば、どんな服装をするかというものはあなたの戦略になります。それによって仕事を円滑に進めることができれば、それはなにより自分にとってプラスですから。
昔、株主総会のナレーションの仕事で、ゴスロリのような恰好をしてきたナレーターがいました。本人が言うには、最近ハマっているファッションで、可愛いから着てきた、とのこと。
この現場、収録自体はスムーズに終わりましたが、クライアントの評価はイマイチでした。
ナレーターの技量は良かったんです。
でも、評価は低かった。それはなぜでしょうか。
クライアントはスーツを日常的に着て仕事をする企業のサラリーマンです。
株主総会という会社の決算などをまとめた内容の収録に、可愛いからという理由でゴスロリファッションの女の子が登場したら、内心は「この子で大丈夫だろうか」となるわけです。
可愛いから良い、ではないんです。仕事の場にゴスロリファッションがそぐわないということです。
会社で仕事をするのにそんな恰好で仕事をしにくる社員とか、あんまり聞きませんよね。
だからナレーターの技量は申し分なかったのに、クライアントの評価は「この子でどうなることかと思ったけど、今回はうまくいった」だったんですね。
もちろん、それ以降その仕事に関わる代理店・制作会社・クライアントからその子に声はかかっていません。だって、実力ではなく「今回はうまくいった」という評価ですから。
第一印象というものはとても大事です。
それがナレーションという一度限りの可能性のある仕事であれば、なおさらです。
どうせなら、相手に安心感を与えて、良い仕事をし、お願いして良かった。またぜひお願いしたい、と思われたほうが得ですよね。
今回はうまくいくかな、大丈夫かな、なんて思われながら仕事をするようでは、実力以前の問題ということになってしまいます。それではせっかくの機会を無駄にしかねません。
もしプロダクションに所属しているのであれば、そんな子にマネージャーは仕事を任せたいと思うでしょうか? 私なら任せません。その子の自己満足のために仕事があるわけではなく、企業の必要性があるから仕事があるわけで、そんなことすら考えられない子に仕事を任せるくらいなら、ちゃんと考えられて、普段から努力している子にチャンスをあげたい、と考えます。
結局は「情けは人の為ならず」ということです。
情けをかけるのは人のためでなく、自分自身のためなんだ、というわけです。
仕事で言えば、第一印象で良い印象を与えることができれば、相手が安心していられる。それによってあなたの仕事はやりやすくなる、やりやすい環境で仕事ができれば実力も発揮しやすくなる、それがあなたの評価につながる。
たかが服装、されど服装なのです。だから「服装とは戦闘服である」ということになるのです。
これがゲームの収録や声優関係のイベントであれば、ゴスロリファッションが(似合っていれば)喜ばれるという場合もあるでしょう。つまりはTPOだということです。
ゴスロリファッションが悪いというわけでなく、どんな印象を相手に与えるかを考えたときに、与えたい印象を相手にもってもらえるか、という視点も忘れてはいけません。自分本位ではいけないのです。
スタジオなどの現場での立ち居振る舞いを、私は個人的に「スタジオワーク」と呼んでいます。
スタジオワークとは、現場でどのようにすることが望ましいかという考え方や行動になるのですが、それについても今後書いていきたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。